高齢化問題や経済の沈滞など日本と比較されることが多いイギリスも、日本のお茶以上に「紅茶」が国民の文化として定着しています。
ここのところ相次いでいる老舗の宇治茶関連企業の倒産を報道する中で、COVID-19パンデミックに加えてEU離脱という大きな節目を迎え、日本以上に経済が混乱しているイギリスの紅茶産業について気になり、現状を調査してみました。
やはりイギリスでも国民の消費行動の変化に老舗の紅茶企業も変化を求められており苦労しているようです。
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イギリスの経済状態
EU離脱の影響: EU離脱により、イギリス経済は大きな損失を被りました。企業投資の低下や労働力不足が主な原因で、GDPはEU離脱前と比べて約4%減少しています。また、貿易の減少や関税の増加も経済に悪影響を及ぼしています。
移民排斥の影響: 移民規制の強化により、特に低賃金労働者の不足が深刻化しています。農業や飲食業、物流などの業種で労働力不足が顕著であり、これが経済全体に悪影響を及ぼしています。
これらの要因にCOVID-19パンデミックが重なり、イギリスの経済状態は悪化しています。
イギリスの茶産業への影響と取り組み
影響: COVID-19パンデミックは、イギリスの茶産業にさまざまな影響を与えました。家庭での紅茶の消費が増加した一方で、原料の輸入工程から供給チェーンに至るまでの間に問題が発生し、2020年には茶市場の収益が14%以上減少しました。
取り組み:
- オンライン販売の強化: 多くの茶ブランドや小売業者は、オンライン販売を強化し、消費者に直接商品を届ける取り組みを進めました。
- 新しい製品の導入: 新しいフレーバーや健康志向の製品が導入されました。
- サプライチェーンの改善: 流通チャネルの混乱を受けて、サプライチェーンの改善が進められました。
イギリスの茶産業は、パンデミックの影響を受けながらも、さまざまな取り組みを通じて回復を図っています。
イギリスで消費される紅茶の主要生産国
日本の緑茶の自給率が2011年時点で約92%で国内消費のほとんどを国内生産で賄われていますが、イギリスの紅茶の原料の99%は輸入に頼っています。
- インド: 世界最大の紅茶生産国で、年間約100万トンの紅茶を生産しています。
- スリランカ: 年間約32万トンの紅茶を生産し、セイロンティーとして知られています。
- ケニア: 年間約30万トンの紅茶を生産し、主にヨーロッパ諸国へ輸出されています。
- 中国: 年間約5万トンの紅茶を生産し、キームン紅茶が特に有名です。
- インドネシア: 年間約15万トンの紅茶を生産し、ジャワ島とスマトラ島が主要な生産地です。
イギリスの紅茶市場の回復
COVID-19パンデミックの鎮静化後、イギリスの紅茶消費は回復しました。2021年以降、紅茶の消費は徐々に増加し、パンデミック前の水準に戻りつつあります。また、紅茶の健康効果が注目され、消費者の関心が高まったことも回復の一因となっています。
イギリスで重視されている紅茶の健康効果
次の健康効果が、イギリスで紅茶が広く消費される理由の一つとなっています。
- 抗酸化作用: 紅茶にはポリフェノールが含まれており、これが抗酸化作用を持っています。抗酸化作用は、体内のフリーラジカルを中和し、細胞の老化や損傷を防ぐ効果があります。
- 体脂肪増加抑制: 紅茶に含まれるカテキンやテアフラビンは、体脂肪の増加を抑制する効果があります。これにより、体重管理や肥満予防に役立つとされています。
- 抗菌・抗ウィルス作用: 紅茶には抗菌作用や抗ウィルス作用もあります。これにより、風邪やインフルエンザなどの感染症予防に効果があるとされています。
- 血中コレステロール上昇抑制: 紅茶に含まれる成分は、血中コレステロールの上昇を抑制する効果があります。これにより、心血管疾患のリスクを低減することが期待されています。
日本でも特定保健用食品として「脂肪の吸収を抑える」とか「糖の吸収をおだやかにする」とか「内臓脂肪を減らすのを助ける」として認可を取得している「からだすこやか茶W+」などが人気ですが、売上規模をコロナ禍前までに引き上げるには至ってないです。
イギリスの健康志向の紅茶ブランド
イギリスでは、日本の「からだすこやか茶W+」や「特茶」のように特定の健康効果を謳った紅茶は少ないですが、健康志向の紅茶やオーガニックティーが人気です。以下のようなブランドが健康志向の紅茶を提供しています:
- Pukka Herbs: Pukka Herbsは、オーガニックハーブティーを提供するブランドで、特に健康効果を重視したブレンドが多いです。例えば、「Three Ginger」や「Detox」などの製品があります。
- Twinings: Twiningsも健康志向の紅茶を提供しており、カフェインレスやハーブティーなどが人気です。特に「Superblends」シリーズは、ビタミンやミネラルを強化した紅茶を提供しています。
- Clipper: Clipperは、オーガニックでフェアトレードの紅茶を提供するブランドで、健康志向の消費者に人気があります。特に「Sleep Easy」や「Detox Infusion」などの製品があります。
これらのブランドは、健康効果を重視した紅茶を提供しており、イギリスでも広く消費されています。
ルイボスティーとは?
また紅茶ではない「ルイボスティー」もイギリスで普及しています。
ルイボスティーは、南アフリカのセダルバーグ山脈に自生するマメ科の低木「ルイボス」の葉を乾燥させて作られるノンカフェインのハーブティーです。以下に、ルイボスティーの特徴や種類について説明します。
特徴
- ノンカフェイン: ルイボスティーはカフェインを含まないため、妊娠中の方や小さなお子様でも安心して飲むことができます。
- 低タンニン: 渋みが少なく、ほのかな甘みを感じる爽やかな味わいが特徴です。
- 抗酸化作用: ルイボスティーにはフラボノイドなどの抗酸化物質が含まれており、健康に良いとされています。
種類
- レッドルイボスティー: 発酵させた茶葉を使用し、濃い赤褐色で豊かな香りと旨味があります。ストレートやミルクティーとして楽しむことができます。
- グリーンルイボスティー: 発酵させない茶葉を使用し、薄い黄緑色でクセが少なくすっきりとした味わいです。ストレートで飲むのがおすすめです。
- フレーバールイボスティー: ルイボスティーにさまざまなフレーバーをブレンドしたもので、レモンやベリー、キャラメルなどのバリエーションがあります。
おすすめの飲み方
- ストレート: そのまま飲むことで、ルイボスティー本来の風味を楽しめます。
- ミルクティー: ミルクを加えるとまろやかな風味になります。砂糖やはちみつを加えても美味しいです。
- レモンティー: レモンを加えると爽やかな風味になります。
ルイボスティーは、ホットでもアイスでも楽しめるお茶で、和食や洋食、スイーツなどさまざまな料理と相性が良いです。ぜひお試しください!
ルイボスティーのブランド
イギリスでルイボスティーを扱っている大きな会社やブランドにはいくつかあります。以下のブランドが特に有名です:
English Tea Shop – 高品質なルイボスティーを提供しており、安定した品質と素晴らしい味で信頼されています。
Clipper – オーガニックのレッドブッシュティーで知られており、環境に配慮した製品を提供しています。
Teapigs – ハニーブッシュとルイボスのルースティーが人気です。
Twinings – ルイボスとハニーのティーバッグが特に人気です。
これらのブランドは、イギリス国内で広く認知されており、さまざまな種類のルイボスティーを提供しています。
日本でもルイボスティーを愛飲されている方が増えているようですね。
イギリスのティータイムの楽しみ方
イギリス人が紅茶を楽しむときに選ぶお菓子には、いくつかの特徴があります。特に日本と違う点を中心にご紹介します。
イギリスの代表的なお菓子
スコーン
イギリスのアフタヌーンティーには欠かせない存在です。スコーンはクロテッドクリームとジャムを添えて食べるのが一般的です。日本でもスコーンは人気ですが、クロテッドクリームはあまり見かけないかもしれません。
ショートブレッド
バターたっぷりのサクサクとしたビスケットで、紅茶との相性が抜群です。ウォーカーズやキャンベルズなどのブランドが有名です。
ジャファケーキ
柔らかなスポンジケーキの上にオレンジゼリーを乗せ、チョコレートでコーティングしたお菓子です。ケーキとビスケットの中間のような食感が特徴です。
ティーケーキ
マシュマロをビスケットの上に乗せ、チョコレートでコーティングしたお菓子です。日本ではあまり見かけないタイプのお菓子です。
ファッジ
キャラメルのような食感の砂糖菓子で、非常に甘いのが特徴です。イギリスでは手作りする家庭も多いです。
日本との違い
クロテッドクリーム
イギリスのスコーンには欠かせないクロテッドクリームは、日本ではあまり一般的ではありません。代わりに生クリームやバターが使われることが多いです。
紅茶の種類
イギリスではミルクティーが一般的ですが、日本ではストレートティーやレモンティーが好まれることが多いです。
お菓子の種類
日本では和菓子や洋菓子が紅茶と一緒に楽しまれることが多いですが、イギリスでは伝統的なビスケットやケーキが主流です。
イギリスのティータイム文化は、紅茶とお菓子の組み合わせが豊富で、どれも紅茶の風味を引き立てるものばかりですね。
ロイヤルミルクティーと一緒にお友達やご家族とイギリス流のティータイムを楽しんでみてはいかがですか?
イギリスの小売業者の苦戦
イギリスでも、COVID-19パンデミックや経済的な不安定さの影響で、小売業者が苦戦している状況が見られます。特に、物価上昇やオンラインショッピングの普及により、伝統的な小売店や茶舗も影響を受けています。
小売業者の苦戦 イギリスでは、トイザらスや家電量販店のMaplinが破産を申請し、多くの小売店やレストランが閉店に追い込まれています。これにより、消費者の購買行動が変化し、オンラインショッピングがさらに普及しています。
なお、トイザらス(Toys “R” Us)は、イギリスでも一度は全店舗が閉店しましたが、2021年に復活し、現在はWHP Globalの所有下で運営されています。新しい店舗がオープンし、再びおもちゃやアウトドア用品、ベビーケア用品などを提供しています。
茶舗への影響 具体的な茶舗の破産事例は少ないものの、経済的な困難や消費者の購買行動の変化により、伝統的な茶舗も影響を受けている可能性があります。
イギリスでも、日本と同様に小売業者が厳しい状況に直面していることがわかります。
和紅茶(国産紅茶)の挑戦!
実は日本でも紅茶を一から生産しているところも、結構あるんですよ。
そのような日本国内で生産される紅茶のことを「和紅茶(国産紅茶)」と呼びます。
和紅茶は、一般的にインドやスリランカなどの海外産紅茶とは異なり、日本の風土や気候に適した茶葉を使用して作られています。
以下に和紅茶の特徴や種類、歴史について詳しくご紹介します。
和紅茶の特徴
味わい: 和紅茶は全体的に繊細で渋みが少なく、甘い香りが特徴です。品種やブランドによって異なる味わいを楽しむことができます。
香り: ほのかな果実のような香りが漂い、控えめで優しい香りが特徴です。
和紅茶の歴史
和紅茶の生産は戦後すぐから始まりましたが、輸入の自由化により一時期衰退しました。
しかし、近年では再び注目を集めており、全国地紅茶サミットや世界和紅茶会議などのイベントも開催されています。
代表的な産地とブランド
和紅茶は日本各地で生産されており、以下のような代表的な産地とブランドがあります。
- 伊勢紅茶(三重県)
- 月ヶ瀬紅茶(奈良県)
- 宇治紅茶(京都府)
- 静岡紅茶(静岡県)
- 出雲紅茶(島根県)
- 八女紅茶(福岡県)
- 嬉野紅茶(佐賀県)
- みやざき紅茶(宮崎県)
- 鹿児島紅茶(鹿児島県)
和紅茶はその繊細な味わいと香りで、多くの人々に愛されています。ぜひ一度試してみてくださいね。
まとめ
日本と同様に歴史ある「紅茶文化」を持つイギリスにおいてもCOVID-19パンデミックやEU脱退、移民排斥などの諸問題により経済が不安定になっており、市民の消費行動に変化が見られるようですね。
しかしながらパンデミック前の水準にまで消費が回復しているイギリスにおける紅茶と、減少が続く日本のお茶とでは置かれている危機感が異なるように思います。
一人一人の消費行動が歴史ある日本のお茶文化の将来を左右する、というと少し大袈裟でしょうか。
少なくともこの記事を読んで頂いた皆さんは、今までと違った視点でお茶をご覧頂けることだと思います。
日本の歴史ある食文化である「お茶」について考えるキッカケになると嬉しいです。
こちらは宇治茶についてまとめた記事ですので、宜しかったらご覧くださいね。
最後までご覧頂き有難うございました。
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