気候変動で変わる日本のワイン産地:山梨と北海道の現在地

「2060年には夏の部活動が日本の大半で不可能になる」──そんな衝撃的な予測が、つい先日、早稲田大学の研究チームによって発表されました(※出典:毎日新聞 2025年4月14日付)。

熱中症のリスクが極端に高まるという将来予測の中、農業、とくに高温に弱いワイン用ブドウ栽培はどうなるのでしょうか。

そんな中、2025年4月16日付の日本経済新聞が報じたのは、ワイン大手メルシャンが山梨県で耐暑性の新品種ブドウ栽培に乗り出すというニュースでした(※出典:日本経済新聞記事)。

しかし私は、このニュースを読みながらこう思いました。

10年後、山梨で、そのブドウは本当に実っているのだろうか?

目次

なぜ、あえて山梨で続けるのか──補助金という現実

メルシャンは長年山梨県で高品質ワインを育ててきた実績があり、今回も「山梨で耐暑性品種を試す」という道を選びました。

その背景には、地域の雇用や既存設備の活用に加え、山梨県による各種のワイン振興補助制度の存在が考えられます。

  • やまなし産地生産基盤パワーアップ事業
  • 県オリジナル品種産地確立事業
  • 赤系ぶどう早期産地化推進補助金

補助金の直接的な利用実態は公表されていませんが、このような制度が企業の投資判断に影響を与えている可能性は十分にあると考えられます。


北海道は、もはやフロンティアではない──サッポロが示した未来

世界的に見ても温暖化によるワインへの影響は大きく、フランスやスペインから、英国や北欧諸国への生産拠点シフトが進んでいます。

日本国内でも北海道は「未来の選択肢」として着実な成果が出始めており、山梨県、長野県についで日本で第3位のワイン生産量を誇ります。

品質の面でも2022年には、サッポロビールの「グランポレール 北海道余市 ピノ・ノワール」が世界最大級のワイン品評会「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード」で銀賞を受賞。

また余市町や仁木町では、ドメーヌ・タカヒコや10Rワイナリーといった実力派の醸造家が次々と新しいワイン文化を生み出しています。

北海道はもはや“フロンティア”ではなく、“バリバリの名産地”としての存在感を高めているのです。


果樹全体の“北への避難”──サクランボ農家の決断

この生産拠点のシフトはワイン用ブドウに限った話ではありません。

山形県では、かつて“果樹の王様”と呼ばれた佐藤錦が、温暖化の影響でうまく結実せず、収穫量が激減しています。

そして、すでに複数の果樹農家が北海道へ生産拠点を移してます。

ブドウもサクランボも“未来の気温”には逆らえない──それが農業の現実なのです。


ワインとは、未来を仕込むこと

ワイン用ブドウは、苗木から収穫までに最低でも3~5年。さらに醸造・熟成・販売までを含めると、いま植えたブドウが世に出るのは10年後です。

気候変動により、2060年には夏の屋外活動が多くの地域で困難になるとされる我が国、日本。

この地で“未来のワイン”が今と同じように育つのか──その保証はどこにもありません。

一方で北海道では、すでに世界的なコンペティションで入賞するワインが生まれています。

これは単なる偶然ではなく、冷涼な気候と真摯な技術が結びついた結果です。

国産ワインが、ようやく世界から「本物」として認められつつあるいま。

ここで判断を誤れば、これまで先人たちが積み重ねてきた努力が水泡に帰す可能性すらあるのです。

未来に国産ワインの評価を残すために、私たちは何をなすべきか。

それを、いま考えるべきではないでしょうか。


パンチです

メルシャンも苦渋の決断のような気がします。
皆さんはどう思われましたか?
コメント欄からお考えをお聞かせくださいね!

参考出典・報道資料

よかったらシェアしてください
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


このサイトは reCAPTCHA によって保護されており、Google のプライバシーポリシー および 利用規約 に適用されます。

reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

目次