先日、元同僚が退職を機に田舎で農業を始めたい、という相談を受けました。
私が早期退職を機に新規就農し、自営農家を10年やっていた経験があったためです。
そのときの会話のうち、「農地選び」について記事にまとめたところ既に多くの方にご覧頂いています。
実はその会話の第一声は「パンチさんはコメを作りたいと思いませんでしたか?」という質問でした。
私は「コメだけは絶対作らないと決めていた」と即答しました。
コメ作りは日本の農業を象徴する「身近」で「重要」な分野ですね。
令和のコメ騒動の中、農業に新たに取り組もうか検討中の方の多くは、「家族が食べる分だけでもコメを作りたい」と考えている方も多いと思います。
お気持ちは分かりますけど、コメ作りは諦めた方が良いですよ。
現代において米生産の実態を見つめると、多くの課題が浮かび上がります。
特に、新しく農業を始めたいと考える方にとって、コメ作りは大変過酷な選択肢です。
正直言って、今の日本でコメ作りをゼロから始めて収益化するのは「無理ゲ~」です。
その理由について述べていきますので、どうぞご覧ください。
コメ作りの現状と課題
都市部から一時間も車で飛ばすと、今でも田んぼが広がってますからコメ作りは私たちにとって身近な農業ですよね。
機械化も進んでいるからリモートワークの片手間で、少し頑張れば兼業農家が出来るかも!とお考えの方もいらっしゃることでしょう。
しかし、その現実は初期投資の高さ、収益性の低さ、そして労働力の確保といった問題が存在します。
例えば、収穫用のコンバインやその他の機器にかかる設備投資は、数百万円から場合によっては1000万円以上にもなることがあります。
機械を購入せずに業者へ委託するにしても、収穫後の作業なども考えると相当コストはかさみ、終いには乾燥工程で他所で作られたコメと混ぜられるため、せっかく手塩にかけて育てた自分のコメが食べられないという、笑えない笑い話もあります。これを避けるには、何百万円もする乾燥機などを自宅に設置する必要があります。
更にメンテナンス費用、燃料費や肥料代、農薬代も年々驚くべきペースで値上がりしてます。
こちらは「帝国データバンクが2024年9月」にまとめたデータの一部です。
全国的なコメ不足と価格高騰のなか、米作農家の倒産や廃業に歯止めがかからない。
2024年1-8月に発生した米作農業(コメ農家)の倒産(負債1000万円以上、法的整理)が6件、休廃業・解散(廃業)が28件発生し、計34件が生産現場から消滅した。
倒産・廃業の件数は23年通年の件数(35件)を大幅に上回って年間最多が確実で、初の年間40件台到達も想定される。
また温暖化の影響が思わぬ形でコメ農家に影響を与えています。
暖冬傾向のため越冬しやすくなったカメムシが勢力範囲と繁殖時期を早めているのです。また年々広がる耕作放棄地がカメムシの一次待避所となっているため、その被害が拡大したまま定着している地域もあるようです。
以上のことを考えると、現在、品薄で絶賛値上がり中のコメの方が遥かに「割安」で「安全」なのです。
自家消費用の分だけでもコメを作りたいというお考えは、今風に言うと「コスパ、タイパが極めて悪い」ので諦めるか、「金持ちの趣味」として利益度外視で楽しんで下さい。
YouTuber「リベ大の両学長」も将来の経済的自由のため、様々な「副業」を薦めてくれてますが、残念ながら農業については一言も触れてません。
10年間自営農家をやってた私の経験からすると、どの分野の農業を始めるにしても「投じたお金は返ってくることは期待しない」というスタンス、つまり余剰資金でやる分なら就農自体を止めはしないです。
でもコメ作りへの参入は、桁違いに大きな負債を背負いこむことなのです。
現役コメ農家さんの草刈りなどの作業を何度か手伝わせてもらって、その御礼に玄米1俵、30㎏を分けてもらうことを考えた方が良いですよ。
手土産に「しあわせのハチミツ紅茶」をお持ちして、何件かのコメ農家さんにご相談がてら、挨拶周りをしてみてはいかがですか?
きっと喜んで皆さんをお迎え頂けると思いますよ。
大規模資本の参入とその可能性
コメ生産を次世代に引き継ぐためには、現代の課題に立ち向かう新しいアプローチが必要です。
一例として、大規模資本による支援があります。
例えば、大和証券やJFEのような大企業が高付加価値の農業、具体的にはパプリカやレタスの施設栽培に参入してます。
もしこれらの企業が大規模なコメ作りに参入することになれば、若者が参加する機運が高まりますよね。
特区制度を活用するなどして企業が積極的に農業に関与できる仕組みを整えることで、技術革新と経済的安定が期待されます。
しかし、現状では米の市場価格の不安定さや規制の壁が、大企業の参入を難しくしているようです。
近い将来には日本のコメ不足を安い輸入品で補うようになるが人口減少やコメ離れも加速するだろうから、国産のコメで儲けを出すのは無理だと、企業側も判断しているのかも知れませんね。
持続可能な農業への道筋
気候変動の進行とともに、従来の方法でコメ作りを続けることの難しさが増しています。
品種改良や栽培方法の改良もありますが、それ以上に年々激しさを増す豪雨や猛暑、渇水といった環境変化に対応が追い付かずに、日本各地で大きな被害が毎年生じています。
中小の零細農家で出来るコメづくり対策は「やり尽くしている」のではないでしょうか?
そうなると大資本による持続可能な米生産のモデル構築に、またもや話は戻ってしまいます。
消費者と生産者を直接つなぐクラウドファンディングや地域独自のブランド開発など、革新的なアプローチを導入することで、農業界に新しい息吹を吹き込む可能性はゼロではありません。
但し、このアプローチで全ての国民の需要を満たし、生産者が持続的に活動が継続できるかどうかは別の話です。
高額所得者層が支持した一部の地域のコメ作り農家が、その顧客のためだけに生産・出荷するというビジネスモデルであれば間違いなく生き残れます。
まとめ
コメ作りは日本の農業の根幹を支えるものでありながら、現実的な課題が多い分野でもあります。
イオンでは値上がりし続ける国産のコメを輸入米とブレンドする対応を始めるとのことです。
このまま国産の良質なコメは贅沢品となり、国産のコメで用意された寿司や鰻重、天丼や鯛茶漬けなどの伝統料理が超高級品となり、多くの日本人が食べられなくなるかも知れません。
そんな将来はご遠慮したいところですが、時代の流れは急速に変化しています。
お金を支払えば「美味しい国産のコメ」が食べられる今のうちに楽しんでおこう!
そんな考え方が一番賢明なのかもしれません。




最後までご覧頂き有難うございました。
退職後の趣味の農業は楽しいですが、年々作業はキツクなりますよ。
いつまでも続けることは出来ない現実を見据えた方が良いです。
疑問やご意見がございましたら、どうぞお寄せ下さいね!
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