今村芳翠園が倒産|創立170年の宇治茶老舗に何が起きたのか?

宇治茶の老舗「今村芳翠園本舗」の倒産を伝えるアイキャッチ画像

1853年創業の老舗「今村芳翠園本舗」が、170年の歴史に幕を下ろすこととなりました。

宇治茶の品質向上と普及に尽力してきたこの名門が、長引く消費不況と原材料費の高騰により自己破産を申請したのです。

六代にわたり受け継がれてきた伝統と技術が消え去りました。

この危機は、宇治茶業界全体にとっても深刻な問題であり、茶文化の未来に暗い影を落としています。

そこで一つ提案です。

心が豊かになるひとときのため、急須で淹れるお茶を楽しんでみてはいかがでしょうか?

体の五感で味わう一杯のお茶を飲むことで、歴史ある茶産業を支え、後世に伝統文化を伝えることができます。

皆さんが日常的に利用されているSNSで呟く

そんな一歩が、誰かを元気づけることができるかも知れません。

今村芳翠園の倒産が意味あるものとなるためにも、次世代に歴史ある食文化を残せるよう、ご一緒に始めの一歩を踏み出しませんか?

皆さんがもし共感頂けたら、このブログをお知り合いにご紹介頂けると大変うれしいです。

パンチです

最後までご覧くださいね

目次

今村芳翠園本舗の歴史

京都府京田辺市に拠点を置く宇治茶卸小売会社「今村芳翠園本舗(いまむらほうすいえんほんぽ)」が事業を停止し、自己破産申請の準備に入ったことが報じられ、同業社だけではなく地元の京都、とりわけ京田辺市の皆さんに衝撃が走りました。

同社は宇治玉露茶を取り扱う老舗の「宇治茶ブレンダー」であり、全国への卸売や抹茶スイーツの販売も手がけていました。

  • 創業者: 今村芳翠園本舗は、1853年(江戸時代・嘉永6年)に創業されました。創業者は今村家の初代であり、宇治茶の品質向上と普及に努めました。
  • 名前の由来: 「芳翠園」という名前は、茶の香り(芳香)と美しい緑(翠)を意味しています。これは、宇治茶の特徴である豊かな香りと美しい緑色を表現したものです。
  • 歴史と伝統: 今村芳翠園本舗は、六代にわたり宇治茶一筋に生きてきた老舗であり、その伝統と技術を受け継いできました。

今村芳翠園本舗は創業以来170年の長い歴史と伝統を持ち、宇治茶の品質と風味を大切にしてきた会社でした。

お茶のブレンダーの役割とは

「お茶のブレンダー」とは、茶葉の選別やブレンドを専門に行う会社や個人を指します。

茶畑で茶の生産をする人(茶農家)と宇治茶ブレンダーの関係性は以下のようになります

  1. 茶葉の生産: 茶農家が茶畑で茶葉を栽培し、収穫します。茶葉の品質は、土壌、気候、栽培方法などに大きく依存します。
  2. 茶葉の加工: 収穫された茶葉は、茶農家や加工業者によって蒸し、乾燥、揉みなどの工程を経て加工されます。この段階で、茶葉の風味や香りが決まります。
  3. 茶葉の選別とブレンド: 宇治茶ブレンダーは、複数の茶農家から仕入れた茶葉を選別し、ブレンドします。ブレンダーの技術と経験により、異なる茶葉を組み合わせて一貫した品質と風味を持つ製品を作り出します。
  4. 販売と流通: ブレンドされた茶葉は、卸売業者や小売業者を通じて市場に出回ります。消費者は、これらの製品を購入して楽しむことができます。

つまり、茶農家が生産した茶葉を宇治茶ブレンダーが選別・ブレンドし、最終的な製品として市場に提供するという流れです。

両者は協力関係にあり、それぞれの専門知識と技術が組み合わさることで、高品質な宇治茶が生まれます。

実は茶農家は「儲からない」と言われる農業の中でも、ひときわ厳しい経営環境の中で事業を継続されています。

その状況をこちらにまとめましたのでご覧ください。

宇治茶ブレンダーの利益構造と脆弱性

では今村芳翠園はなぜ倒産したのでしょうか?

お茶ブレンダーの利益構造は、いくつかの要因に依存しており、「脆さ」を併せ持つ企業体です。

以下の点がその理由です

  1. 原材料費の変動: 茶葉の価格は天候や収穫量に大きく影響されます。これにより原材料費が変動しやすく、利益率に影響を与える可能性があります。
  2. 消費者の嗜好の変化: 茶の消費量や嗜好が変わることで売上に影響を与えることがあります。特に若年層の嗜好が変わると、伝統的な茶の需要が将来的に減少する可能性があります。
  3. 競争の激化: 国内外の競争が激化することで、価格競争が生じて利益率が低下することがあります。特に安価な中国からの輸入品との競争が課題となることがあります。
  4. 経済状況の影響: 経済の低迷や消費不況が続くと、高級茶の需要が減少し、売上が減少する可能性があります。
  5. 固定費の負担: 事業運営にかかる固定費(人件費、設備費、賃料など)が高い場合、売上が減少すると利益が圧迫されることがあります。

これらの要因により今村芳翠園も倒産することとなりました。

お茶に関連する茶葉農家の廃業も相次ぎ、小売業者もその例外ではなく同じく100年以上の歴史を誇る「お茶の玉宗園」も2024年に自己破産を申請することとなりました。

株式会社お茶の玉宗園(ぎょくそうえん)の自己破産について – Makoto-Lifecare

その中で、茶業界にも一つの光明が見えて来ています。長い時間と労力を費やして品質の向上や新商品の開発、マーケティング戦略に尽力されて来られた結果、「抹茶」が輸出品として高く評価されています。

こちらの記事にまとめておりますのでどうぞご覧ください。

今村芳翠園の倒産が茶農家に与える影響

「今村芳翠園本舗」の自己破産が茶農家に与える影響は、いくつかの要因によって異なる可能性があります。

ただ一般的には限定的なものであろうと考えられます。

  1. 取引先の多様性: 茶農家が複数の取引先を持っている場合、一つの取引先の破産が直接的な大きな影響を与えることは少ないです。多くの茶農家は、複数のブレンダーや販売業者と取引を行っているため、リスクが分散されています。
  2. 市場の需要: 宇治茶の需要が高い場合、他のブレンダーや販売業者が今村芳翠園本舗の取引先を引き継ぐ可能性があります。これにより、茶農家の売上が維持されることが期待されます。
  3. 地域の支援: 地域の農業協同組合や政府の支援策がある場合、茶農家は経済的な支援を受けることができます。これにより、短期的な影響を緩和することができます。
  4. 品質とブランド力: 茶農家が高品質な茶葉を生産している場合、他のブレンダーや販売業者からの需要が高まる可能性があります。品質とブランド力が強い茶農家は、取引先の破産による影響を受けにくいです。

今村芳翠園本舗が主要な取引先であった場合や、特定の茶農家が依存していた場合には、影響が大きくなる可能性もあります。

茶農家がどの程度今村芳翠園本舗に依存していたかによって、影響の度合いが変わるでしょうが、今のところ連鎖倒産した生産者や関係先のニュースは届いておりません。

ところで…

なぜ私が茶農家のことを気に掛けているかというと私の経歴に関係します。

19年間勤めた大手製薬会社を早期退職して、10年間農家経営をやっていたからです。

現在は廃業して農業関係の会社に勤めております。

そのあたりのお話をこちらにまとめてますので、もし宜しかったらご覧ください。

同志社女子大学まちづくり委員会との産学コラボレーション

今村芳翠園本舗は地元田辺市の同志社女子大学と共同でオリジナルワッフル「Tanabeffle(タナベッフル)」を開発し、販売するというプロジェクトにも取り組んでました。

若者に興味を持ってもらえるような京田辺市の名物・土産を開発したいという同社から同志社女子大学まちづくり委員会への呼びかけにより昨年始動しました。

「京田辺といえば…これ!」プロジェクトとして、京田辺ならではの抹茶、ほうじ茶、一休納豆の3種類の味とワッフル(焼き菓子)を掛け合わせたワッフル「Tanabeffle(タナベッフル)」を開発し、地元開催の「たなフェス2022」や大学祭の他、同社の通常店舗、デパートでの催事等で限定的に販売していたそうです。

地元の京田辺市を盛り上げるために、産学共同プロジェクトにも積極的に取り組んでいたと聞くと、今回の自己破産の報道は非常に残念な気持ちになりますね。

今村芳翠園本舗の業務を承継する可能性のある茶ブレンダー

京都府内には複数の茶ブレンダーが存在し、今村芳翠園本舗の業務を承継する可能性があります。

以下はその一部です

  • 福寿園: 創業230余年の老舗茶舗で、宇治茶のブレンドや販売を行っています。
  • 一保堂茶舗: 京都市内に本店を構える老舗で、日本茶のブレンドや販売を手がけています。
  • 丸久小山園: 宇治市に本店を持ち、宇治茶の製造・販売を行っています。
  • 柳桜園茶舗: 京都市内にある老舗茶舗で、宇治茶のブレンドや販売を行っています。

これらのブレンダーは、今村芳翠園本舗の取引先や業務を引き継ぐ可能性があり、茶農家への影響を最小限に抑えることが期待されます。

これらの茶舗の多種多様な生き残り戦略について、こちらにまとめておりますのでご覧ください。

追記 2024年10月26日

企業の業績評価で信頼と実績のある帝国データバンクより日本の老舗企業に関する興味深い分析結果が公表されましたので、その一部を紹介させて頂きます。全国「老舗企業」分析調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

日本の老舗企業:世界に誇る伝統と現代の課題

世界で業歴100年を超える企業のうち、半数以上が日本に存在するという調査結果があります。

国内には約4万5000社の「ニッポンの老舗」があり、これらは日本の魅力として語られることが多いです。

特に、清酒製造や呉服関連など、日本の伝統文化を彩る産業が多くの老舗企業として今なお事業を継続しています。

老舗企業の財務指標分析では、長年にわたって蓄積された資産による財務の収益性・安定性が強みとして確認されています。

しかし、2024年9月時点で老舗企業の倒産は110件に達し、過去10年間で最も多かった2019年と並ぶ高水準で推移しています。

倒産の要因としては、相次ぐ値上げの波に追いつけなかった物価高倒産(22件)、後継者不在による倒産(16件)、金融機関から返済条件の変更(リスケジュール)を受けながらも経営改善が図れなかった返済猶予後倒産(16件)などが挙げられます。

さらに、円安、コンプライアンス違反、公租公課滞納などを要因とする倒産も複数確認されています。

こうした状況を踏まえて、金融機関からは「老舗だから大丈夫だろうというイメージに捉われることなく、これまで以上に本業の事業性評価を細かくチェックする必要がある」といった声も聞かれ、今後は老舗企業に対して厳しい見方が強まるとみられる。

引用元:帝国データバンク「全国「老舗企業」分析調査(2024年)」

老舗茶舗である今村芳翠園やお茶の玉宗園の相次ぐ自己破産で、間違いなくお茶業界各社に対する金融機関のチェック・監視の目は厳しくなることだと思います。

私たち一般人からはどの企業が健全経営をしているかを判断することは簡単には出来ません。

そうであれば、現代の私たちに寄り添おうと新しいメニューや店舗を出したり、お茶の裾野を広げるための努力を惜しまない「入りやすい・行ってみたくなるお店」に行ってみる、そして買って、味わってみることから始めるほかありません。

そしてその評価をお友達やお知り合いとSNSなどを通じて共有してみませんか?

私たちがこれからも残るべき企業を応援できる、唯一の方法がコレだと思います。

皆さんはどう思われますか?

もし宜しかったらコメント欄からご意見やご感想をお聞かせくださいね。

追記 2024年11月13日 今村芳翠園の倒産から約1ヶ月です

「今村芳翠園本舗」に続いて「お茶の玉宗園」が自己破産を申請するというニュースが飛び込んで来てから約1ヶ月が経ちました。

私のまとめた記事には、今日もたくさんの方が閲覧に来て頂いており、既に延べ1万人の方にご覧頂いております。

それだけ歴史ある老舗であった2社は多くの皆さんに愛されており、突然の閉店と自己破産のニュースが衝撃だったのだと思われます。

私の呼びかけに応じて頂き、この記事をSNSで拡散頂いたり、お知り合いにご紹介頂く方もいらっしゃいました。

きっとこの記事をご覧頂いている方の中には、自己破産した2社の関係者の方もいることだと思います。

間違いなく皆さんが働いておられた会社はお客様に愛されてました。

この場を借りて報告申し上げます。

まとめ

宇治茶業界全体としては、老舗の破産が業界の信頼性に影響を与える可能性があります。しかし、他のメーカーは品質の向上や新商品の開発を通じて、ブランドイメージを維持・向上させる努力を続けています。

全体として、今村芳翠園本舗の破産は業界にとって大きな出来事で、他の企業も衝撃を受けたことだと思います。

元々高級なお茶は贈答用としてお中元やお歳暮に使われていた商品であり、バブル崩壊や景気低迷期にその文化が薄れた影響を真正面から受けています。日常使いの場面でも急須で淹れるお茶よりもペットボトルのお茶を飲む機会も増えて来ていて、気が付けばお茶の専門のお店は百貨店の地下売り場でしか見なくなってます。

そう考えると歴史に裏付けられた老舗が、顧客満足度を下げずに変革に挑戦するのは、新興企業よりも厳しい道のりかも知れません。

そんな中、お茶の素晴らしさを実感させてくれる書籍を見つけて、毎朝お茶を頂くことが習慣となりました。

お茶と共にある暮らしは、心に潤いを与えてくれます。

茶産業を再び活気あるものにして次世代に残すためには私たち一人一人の支援が欠かせません。

もし皆さんが共感頂けるようでしたら、ご友人やお知り合いの方にこのページをご紹介下さいね。

ピーチです!

最後まで読んでくださって、ありがとうございます
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“The leaf falls not because it is weak, but because its time has come.”
(葉が落ちるのは、弱いからではなく、時が来たからだ。)

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