早期退職を機に地方で農業を始めようかな、とお考えの皆さん、
その夢、ちょっとだけ待ってみませんか?
もし10年前に戻れるなら、42歳の私は1ヶ月間、海外で農業を満喫します!
恐らく新規就農したかったという私の夢は、異国での非日常体験で満たされると思います。
そして帰国後には、これまでのキャリアと短期就農体験が活かせる職への再就職を考えることでしょう。
この考えに至ったのは、「農業が本業」では「老後の生活」が成り立たないと気付いたからです。
これからの時代、「農業は趣味」として適切な距離で付き合ってみてはいかがでしょうか?
最後までご覧くださいね
ワークアウェイ制度の概要の紹介です
正直にお話すると私は早期退職してすぐに新規就農したことは拙速だったなぁと反省してます。
今ならワークアウェイ制度で海外で農業を十分に体験してから進路を慎重に考えたいと思います。
ワークアウェイ制度は、ボランティアが平均週5日、1日4〜5時間の労働を提供する代わりに、ホストが宿泊場所と食事を提供するというマッチングサービスです。
この制度は、農作業の手伝いのほか、家畜の世話、宿泊施設での受付業務、異文化交流、語学教育、環境保護プロジェクトの補助など、多岐にわたる仕事内容を提供して、人生を変えるきっかけを得ることもあるとされています。
若者に人気のワーキングホリデーは18歳以上30歳以下と年齢制限があるため、残念ながら40代以上の方は対象ではありません。
しかし、このワークアウェイ制度には年齢制限もなく、ワーキングホリデーの29か国を大きく上回る170か国以上で利用可能です。
つまり大人も子供もOKなのでご家族一緒に非日常体験ができる、究極の「コト消費」なんです。
何だか聞いているだけでもワクワクしませんか?
ご家族との思い出を残しながら「語学力やコミュニケーションスキルへの自己投資」ができる!
とても魅力的ではないでしょうか?
こちらに情報をまとめてますので、皆さんの選択肢の一つとしてどうぞご検討下さい。
1ヶ月でいくらぐらい費用が掛かるかというと、ビックリするほど安いですよ!
詳しくはこちらの記事で紹介しておりますので是非ご覧くださいね。
ワークアウェイでの就農体験はご家族との思い出づくりとしても重要です。
そして皆さんの本当にやりたいことを見極める上での貴重な機会となりうると確信してます。
一旦、慌ただしい日常から距離を置いて海外で1ヶ月間の農業体験をやってみるのは、きっとプラスになりますよ。
短期間の海外農業体験ならば、新規就農とは異なり簡単に後戻りも出来ますよ!
様々な非日常体験を得て、完全にリフレッシュして、帰国後に転職活動を頑張ってみてはいかがですか?
自己紹介です
申し遅れましたが、私は10年ほど前に40代で早期退職し、ゼロから農家を始めました。
サラリーマンとしての約20年間、多くの素晴らしいチームメイトに支えられてきました。
しかし、次第に「自分一人の力でどこまでやれるか試してみたい」という気持ちが湧いてきました。
そこで、会社の早期退職制度に応募し、2012年4月に新規就農しました。
新規就農後、多くの挑戦を重ね、手痛い失敗も経験しましたが…
脱サラ後7年目に日本一のJA産直市場で月間売上1位を達成しました。
農地の拡大も検討しましたが、10年の節目で廃業することにしました。
農家をやめた理由は「地球温暖化」の影響で満足のいく野菜が育てられなくなったからです。
その結果、サラリーマンへ逆戻りすることとしました。
「農業は儲かる」と言われる方も一定数いますが、多くの農家は年間売上300万円もあれば上々です。
日本の平均年収458万円(2022年)よりずっと低いので驚かれた方も多いことでしょう。
農業は「余剰資金で老後に楽しむ贅沢な趣味」として適切な距離感でお付き合いされてはいかがでしょうか?
資金計画と自己資金について
お話は私が新規就農した、今から10年以上前まで遡ります。
私は最初に市役所の「農業振興課」に新規就農の手順について相談に行きました。
「日本の農業の未来のため、どうぞ宜しくお願いします」と大歓迎されると信じて疑いませんでした。
ところが開口一番、「1000万円の貯金はありますか?」と質問されて驚きました。
生活費が240万円/年かかるとして、トラクターや軽トラックといった機械も必要です。
農業収入が現実のものになるまでに必要な生活費と併せて1000万円は最低限必要な金額でした。
一方で2023年のマイナビ農業の調べによると、新規就農者が用意した自己資金の平均額は約451万円とのことです。
つまり新規就農者は自己資金だけでは不足し、補助金や融資を利用するケースが多いことが伺えます。
ではいくら貯金があれば40代で新規就農して大丈夫かと聞かれると、家族構成や皆さんの金銭感覚が分からないので一概には回答出来ないです。
ただ農業を生活の拠り所にして、その他の世帯収入(給与所得や不動産収入、配当収入など)がないのであれば、たとえ独身であっても「貯金はいくらあっても十分ではない」というのが私の答えです。
退職金や今までの貯金などが仮に3000万円あったとしても、田舎に中古の一軒家を買って、退職翌年に住民税や国民健康保険税を払ったら手元に残るのは多くて半分くらいですよね。
安定収入がなくなり、貯金を取り崩す生活は思った以上に心細いものです。
これから新規就農に挑戦する30代~40代の皆さんは、年金制度が今より良くない中で、更に地球温暖化というハンデを背負って農業に取り組み、老後2000万円問題の不安と日々向かい合うこととなります。
独身の私でも大変だったのですからご家族がいらっしゃる方が感じるプレッシャーは大変なものだと思いますよ。
いわゆる補助金についてのお話です
次に2022年から開始された「農業次世代人材投資事業」の交付金についてお話します。
49歳以下の認定新規就農者であることなどを条件に、年間150万円の交付金を最大3年間、使い道を限定せずに支給されます…Ⓐ
これとは別に「新規就農者育成総合対策経営発展支援事業」として日本政策金融公庫が最大1000万円を無利子で融資し、就農後3年以内に機械や施設を購入するための資金として利用できます。返済は10年間の均等払いで、国と地方が毎年返済資金を肩代わりする仕組みです。…Ⓑ
ただし、就農から3年で農業をやめた場合、年間150万円の交付金Ⓐには返還規定が設けられています。3年間で最大450万円を受け取ったケースでは満額の450万円の返還義務が発生します。
- 3年で離農した場合:450万円満額の返還義務(3年分)
- 4年で離農した場合:300万円の返還義務(2年分)
- 5年で離農した場合:150万円の返還義務(1年分)
- 6年で離農した場合:交付金の返還義務なし
Ⓑの残りの7年分は自分で日本政策金融公庫に返済する必要があります。例えば、1000万円を借りていた場合、残りの借金は700万円となります。
交付金を受け取った後、もらってたのと同じ3年間就農すれば返還義務なしというコンセプトですね。
無利子融資と交付金を満額の1,450万円受給したけれども、3年目で農業を辞めたという場合には「1,150万円の返還義務(借金)」が手元に残るということです。
離農後1~3年目は毎年250万円(毎月20万8,333円)を返済し、離農後4~7年目は毎年100万円(毎月83,333円)を返済する義務があります。
就農後、何があっても10年は続けられる覚悟がある方にとっては大変心強い制度です
でもご自身やご家族の怪我や病気など何らかの理由で離農せざるを得なくなったとして、この借金を返済できる再就職先を見つける自信がありますか?
そんな人、なかなかいないですよね… これが多くの(元)新規就農者が「夜逃げ」する一つの理由です。
農業への取り組み方
皆さんがなりたいと考えている自営農家は1000万円もの自己資金を投じる価値があるものでしょうか?
はたまた、補助金・交付金という名の借金までして人生を賭けるものでしょうか?
独立するにしても今までの皆さんの経験を活かして始められるスモールビジネスは見つかると思います。
自営農家で生活を支えている方たちの努力やご苦労、ご心労は大変なものです。
皆さんには「農業は趣味」として適切な距離感で付き合って頂くのがお薦めです。
それでも「自分はどうしても農業がやりたいんだ‼」という覚悟のある方にも是非、週末やまとまった連休に近隣又は就農しようと思ってる地域の農家さんに定期的に作業を手伝わせてもらって下さい。
- 農作業で一番地味で大変な包装・出荷作業を体験する
- 夏の暑さ、冬の寒さの中で農作業の一連の流れを体験する
- 苦労して育てた野菜が出荷ピーク時には値崩れし、且つ大量に売れ残って廃棄されることを知る
- 収入が想定していたものよりも、ずっと低いことを知る
農家が直面している現実は会社員とは異なる厳しさが待ってます。
早期退職と新規就農
早期退職を機に新規就農を考える方の中には今の職場環境に対して色々な思いがあるのでしょう。
でもどこの社会でも人間関係にはストレスがつきものです。農家だって例外ではありません。
他に収入源がない状態で農業を「生活の拠り所」にするのは、確実に経済的な状況を悪化させます。
怪我や病気などで長期間働けなくなったことを想定してみて下さい。
個人事業主には「有給休暇」はありません。休むことは、即、収入ストップです。
農業に限らず40歳を超えて脱サラしてフリーランスへ転身するリスクは過小評価しない方が良いですよ。
言い換えると「会社勤めは決して悪いことばかりではない」ということです。
この本ではサラリーマンを辞めた翌年に何が起きるのか、詳しく紹介されてます。
住民税と国民健康保険税のダブルパンチを軽く見ていた私は、請求額に相当ビックリしました。
漫画で非常に読みやすいので早期退職をご予定の方はご一読をお薦めします。
個人経営以外で農業を仕事にする方法はあります
農業を仕事として取組み、自給率のアップや食の安全の一助となりたいという方には
「施設栽培やってる農業法人に転職して安定収入を得る」ことが一つの選択肢です。
大手通信会社や電力会社、鉄鋼メーカーや証券会社でもSDGsの流れで、新規事業として大都市近郊で施設栽培の農業を始めてる会社が増えてます。
ただし農業法人も「口コミサイト」などの評価を見る限り、他の業界以上に離職率も高そうです。
「技術を習得出来次第、独立を考えている」という人も一定数いるからというのは分かりますが、
生き物である野菜や果樹・家畜と付き合う仕事ですから当番制で土日祝日、年末・年始も出勤日があります。
更に施設栽培には露地栽培とは異なり多額の設備投資や光熱費が発生する分、人件費も低く抑えられてます。
入る前に分かってはいたことでも、いざ実際に働いてみると耐えられるずに退職する人もいるのでしょう。
2024年8月に京都の野菜工場の会社が民事再生法の申請手続きを行いました。
農業を取り巻く環境は大変厳しく、農業法人の倒産が増えてます。
こちらに情報をまとめましたのでどうぞご覧ください。
後悔をしないように収入や労働条件、財務状況など事前に調査して納得の上でご応募下さい。
キャリアの賞味期限
早期退職を機に別業種への転職をお考えの方には、ご自身の「キャリアの賞味期限」についてご確認ください。
大企業で長年責任のある仕事を任せてもらった経験がある方は、「農家経営がうまく行かないと感じた場合には、同業の中小メーカーならいつでも自分は戻れるはずだ」と思うかもしれません。
しかし、10年の農家経営を経験して出戻りを希望すると「元の業界を離れて3年経っているから受検資格すらない、もう賞味期限切れです」と言われることもあります。
冷静に考えれば3年も経てば築き上げた社内外の人脈も知識も時代遅れになりますからしょうがないですね。
50代や60代となると更に転職のハードルは上がります。
退職を決断する前に、是非ビズリーチなどの転職サイトに早めに登録して下さい。
そして複数の転職エージェントからのアプローチをもらい、ご自身の今までのキャリアの棚卸しと、これからの人生の選択肢について整理してからでも遅くはありません。
まとめ 追記 2024年10月26日
農林水産省の調査によると、2023年度(23年2月〜24年1月)の新規就農者は4万3460人と、2022年度より5%少ない結果となりました。
これは4年連続の減少であり、5年前の18年度比では22%の減少となっていると日経新聞電子版が伝えています。
この減少の理由はいくつか考えられます。
1. 農業資材の価格高騰
肥料や燃料の価格が急激に上昇し、農業経営のコストが増加しています。
これにより、新規参入が難しくなっています。
2. 気候変動の影響
異常気象や気候変動が農作物の生育に悪影響を与え、農業のリスクが高まっています。
3. 高齢化と後継者不足
農業従事者の高齢化が進み、若い世代の農業への参入が減少しています。
4. 経営の不安定性
農業経営の不安定さや収入の不確実性が、新規就農者の減少に繋がっています。
これらの要因が重なり、新規就農者の減少が続いていると考えられます。
持続可能な農業への取り組みや支援策が急務となっています。
最近の物価高もあり、私が新規就農を志した2012年よりも参入ハードルが上がってしまっています。
このタイミングで安易な夢の実現や現実逃避のために農業を志す方はいないものと思います。
しかしながら早期退職を迫られる一方で再就職の活動が上手く行かないことが続いたりすると、手元に資金があるだけに田舎暮らしや農業の持つ「平和な空気」の誘惑が突如として湧いて来ることがあるんです。
人生一度っきりですから、どうせなら思い切ったことをやってみませんか?
早期退職で勝ち取った時間は、在職している人たちには決して真似できないことをしませんか?
海外での短期農業を家族と一緒に経験しましょう!
転職活動の武器に「語学力」と「行動力」が履歴書に加わり、きっと家族との絆も深まりますよ。
個人経営の農家になる投資金額と比べたら経済的負担も気楽なものですよ。
この情報が新規就農や定年帰農を考えている皆さんのお役に立てれば幸いです。
周りに新規就農をお考えの方がいらっしゃいましたら、是非こちらをご紹介下さい。
またご賛同頂ける方はこちらの情報をSNSで発信頂けると嬉しい限りです。
最後までご覧頂き
有難うございました。
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